飼い主とペットとが一緒に入れるお墓や霊園について詳しく解説します
家族として暮らしていたペットなら、亡くなった後も一緒にいたいですよね。ペットの供養にはペット専用霊園という方法もありますが、できれば飼い主とペットが一緒に入れるお墓や霊園があれば理想的です。最近、人間の霊園や墓地のなかにはペット供養も一緒にでき、家族である飼い主と一緒のお墓に入れるところも増えてきました。ここでは、ペットに「もしものこと」があった時の飼い主の思いや、いまだに少ないペットと一緒に入れる霊園の情報などについてまとめてみます。
割の人が「入れるならペットと一緒のお墓に入りたい」
※「インターネット調査による100人アンケート」
ペットとお墓の関係について次のような興味深いアンケート結果があります。
<アンケート内容>
【ペットを飼っている(飼っていた)人で、自分達の霊園探しをしている人へ】
Q.お墓にはペットも一緒に入りたいですか?
A.ペットと一緒に入りたい 6割
ペットと一緒には入りたくない 4割
ペットの飼い主のうち約6割がペットと一緒に入りたいため、動物に対応した霊園を探していることがわかりました。ペットと一緒に入りたい理由として、下記のようなものがあげられました。
・大切な家族の一員として暮らしてきたから
・自分が亡くなってもペットと一緒にいたいから
・ペットを自分の子どものように考えているから
一方、残り4割の人たちが「ペットと一緒に入りたくない、または入らない」と答えたのはなぜでしょうか。
・人間とペットが同じお墓に入るのは違和感があるから
・人間と動物のお墓は別にするべきと考えるから
・一緒に入りたいけれど、霊園の数が限られており、費用もかかるから
・既に持っているお墓がペットの埋葬を許可していないから
古くから仏教を主たる宗教として信仰してきた日本では、人間と動物は死後に属する世界が違うと考えられてきました。人は人、動物は動物としての世界がある、と分けてきたのですね。その考え方から、死後は、ペットと人間は別々にしたほうがいいと感じている人もまだ多いことがわかりました。自分はペットが大好きだが、ご先祖様や自分の子孫の中には、動物が苦手な人がいるかもしれない、と考える人もありました。ペットが亡くなった後、飼い主の思いがどの世代まで受け継がれていくかも考えるべきことかもしれません。
アンケートから、ペットと一緒のお墓に入りたいと考えている人の割合は多いものの、まだ飼い主全体がそう考えているわけではないことが伺えました。
ペットと一緒に入れるお墓は?
ペットを埋葬して供養するには次のような方法があります。
・ペットと人が一緒に入ることが可能なお墓や霊園
公営霊園では、ペットと人を一緒に埋葬することを認めている霊園はありません。一方民間が運営する霊園のなかには、ペットと人を一緒に埋葬することを許可している墓地があります。埋葬の仕方には、人とペットの骨壺を納める納骨室(カロートといいます)を別々にするか、同じカロートに納めるかの2通りに分かれます。ペットは大切な家族としていつも一緒にいたから、亡くなった後もずっといっしょにと希望して、ペットもいっしょのお墓を選ばれるご家族が多いようです。このような霊園では、霊園の敷地内にペット可の区画を限定するなどして、動物が苦手な他の墓地使用者の方に配慮しています。
・ペット専用霊園の個別タイプの墓地
動物だけが埋葬される「ペット専用霊園」でも、供養のカタチを選ぶことができます。ペット専用の墓石を建ててペットだけの遺骨を納める個別墓では、人間の入るお墓と同じように、墓石や塔婆、墓地の広さをしっかり取ったものから、ペット用にミニサイズにしたものまでさまざまなタイプがあります。ペットは人より寿命が短いことが殆どですから、何頭も飼っている方はペットが年老いて亡くなると順にこの専用のお墓に納めて供養されるようです。個別墓タイプには、一定期間のレンタル契約を結べるものもあり、総額費用は購入より安くなるので、自分たちだけのお墓にお参りしたい方は、契約タイプを選んで検討するとよいでしょう。個別のお墓ですから、飼い主の思いを反映したデザインやオリジナル彫刻を施すこともできます。
こうしたペット専用の霊園には専用の火葬炉や葬儀・法要ができる斎場などを備えた施設があるところも増えています。霊園によっては遺骨を預かってくれるサービスを提供しているところもありますし、春・秋彼岸に合同法要を行っている霊園もあります。すぐに埋葬するのが寂しいと感じたら、しばらくは預骨サービスを利用し、法要等に出席しながら気持ちが落ち着くのを待つなどするのもよいでしょう。
・ペット専用霊園の合同供養墓
ペットをひとつの供養塔にまとめて入れる合祀墓、永代供養墓ともいいます。他の家のペットの遺骨と一緒にひとつのお墓に埋葬されます。骨壺で納めず、火葬後散骨される場合が殆どです。モニュメントなどがあり、写真を印刷したプレートを取り付けられるものや、樹木葬といって、遺骨を土に埋葬して自然に還すというやり方も見られます。
このようにペットのお墓には以上3つのタイプがあります。飼い主の予算や希望に応じて、それぞれに選ぶことができます。ただ、実際はまだまだペットに対応した霊園は数が限られるのが現状です。
ペット可のお墓が少ない理由は?
ペットに対応したお墓や霊園が少ないのはなぜでしょうか。次のような理由が考えられます。
・広い土地やまとまった資金、周辺への配慮が必要
ペット専用の霊園であっても作るとなると、人間のお墓と同様に、交通の便の良いところへの用地の確保、区画の整備や管理事務所、火葬炉等の施設建設に必要な資金の調達、周辺住民への配慮など多くの課題があります。
・ペットは「物」扱い
ペットは愛玩動物として、生きている時も法律上では「物」という扱いになります。このため、亡くなった後その遺骨を人間と一緒に埋葬しようとすると「副葬品」の扱いとなる、というのが今の社会の現実です。ペットを愛する人たちには、ちょっとショックな表現かもしれませんね。
そして、この「副葬品」の取り扱いについては霊園ごとに定められたルールによって可・不可が異なり、まだペットブームが到来していなかったころに開園した霊園では、動物を一緒に埋葬しないとする霊園が殆どだったことも理由のひとつです。また、墓地への埋葬にあたっては、墓地についての法律により墓地使用者全てに平等に「宗教的感情を乱さない」ことが求められているため、ペットと人の共葬を認めていない霊園が多いのです。公営霊園でペットの共葬が認められていない理由は、このあたりにあるようです。
・文化的な理由
先に書いたように、日本では文化的に人間と動物をしっかり区別をつけて生活する習慣が続いていました。特に仏教では動物は死後畜生道に堕ちるとされており、人間とは別の世界に行ってしまうこと、畜生道は生前に悪行を重ねた人間が生まれ変わる世界とされてきたという背景があります。また、動物は今のように家族として共に暮らすパートナーではなく、牛や馬をはじめとする農耕用や食用に飼われてきた家畜という位置づけが長く続いていたことも、人間とペットのお墓を別にするという考え方が消えない理由です。
まとめ
現代でも、ペットと一緒のお墓に入るのはまだ多数派ではないといえます。法律的な問題や慣習の壁などがあり、飼い主とペットが一緒に入れる霊園の数が少ないのも事実です。また、対応しているお墓や霊園は費用がかさむため、入れたくてもためらってしまう飼い主も多いと見受けられます。
しかし核家族化で兄弟の数が少なくなり、SNSの影響で友達との関わり方にも変化が生まれている現代社会においては、無償の愛を注いでくれるペットとの触れ合いはかけがえのない心の癒しとなっています。「飼い主とペットが同じお墓で死後も共に」というニーズは次第に高まっています。一昔前までは、自宅の庭に埋葬するなどすることが多かったペットですが、マンション住まいで埋葬できる土地がないといった住宅事情も、ペット霊園の需要につながっていると言えるでしょう。
ペット専用墓地や樹木葬などは民間霊園を中心に広がりつつあり、今後は動物可の施設が増加すると予想されるので、これからの動きに期待したいところです。死後もペットと一緒に暮らしたい……飼い主としてそんな気持ちを大切にしたい人なら、ぜひ参考にしてみてください。