値段以外も全部わかる、成り立ちから学ぶ墓石の選び方
歴史から見るお墓の変化
お盆やお正月、墓地にお参りに行くとたくさんの種類の墓石を目にします。色や刻まれている文字の形式、高さ、形まで様々です。また、墓石は多様な種類に伴って大きく値段も違います。しかし大抵のものが角柱形をしており、大まかに見れば統一されています。
このような形式のお墓はいつから存在したのでしょうか。弥生時代や古墳時代の日本においては、巨大な墓である「古墳」などが存在しました。一つの山に匹敵するようなサイズのものもあります。しかしそれらは一部の権力者に限られ、その他の人間は集落の一角に合同で埋葬されるのが一般的でした。やがて時代は流れ、江戸時代になると檀家制度の影響で少しずつ特権階級にない人々の間にも、個人の墓を持つという習慣が普及していきました。特に急速に都会化した江戸においては自分の墓を土地に建てるということは難しく、その結果現在のような寺院に併設された寺院墓地が定着しました。
さて、墓石ですが、中世のころには卒塔婆と呼ばれる木製の板を建てるのが主流だったと言われています。卒塔婆とは梵語の「ストゥーパ」に漢字をあてたもので、もともとは釈迦の骨、すなわち仏舎利をまつったインドの建物「ストゥーパ」を模してつくられたものです。現在でも墓の後ろに立てることがあります。形は仏教の世界観である五大「空」「風」「火」「水」「地」を表しており、現在では供養のための題目や経文などを刻むのが一般的です。
やがてそうした卒塔婆は石塔へと変わり、鎌倉時代以降は多くの石塔がつくられました。やがて江戸時代に入り、それらが一般へと普及する中で、供養の意味合いが強かった石塔は個人のお墓を示すようになっていきます。角柱形の墓石はそうした流れで登場し、江戸時代には庶民にも普及していったと言われています。角柱形であるのは、文字を刻みやすいからだといわれており、江戸時代以降主流になっていきました。
墓石を選ぶ際のポイント
さて、いざ墓石を買うとなったとき、どのように選べばいいのでしょうか?石の種類だけでも国内外300種類ほどあり、値段も様々です。しかし、一概に品質がいいものが高いとは限りません。値段は希少性で決まります。海外から大量に輸入できるものは安く、また国内の生産数の少ないものは高くなります。大抵の石材会社にはサンプルが用意してあるので、悩んだ際はそれを取り寄せて決めることもできます。
墓石を評価する際には、次の三点が主に参考になります。「吸水性」、「硬度」、「見かけ比重」です。このうち吸水率は低い方がいいと言われています。石は、目には見えませんが小さい穴がたくさんあいており、雨などが降るとわずかではありますが水を吸収します。しかしその際に凍結してしまうとひび割れてしまうため、吸水率が低いほうがいいと言われているのです。硬度は圧縮強度と言い換えることもできますが、すなわち耐久性につながってきます。墓石は何年も何十年も外に置かれ続けるものです。その間、風雨はもちろん、紫外線などにもずっとされされ続けることになります。それに耐え抜き、きちんと砕けずに残っていくためには、それ相応に堅い石材を選ぶ必要があります。
もう一つ参考になるのが「見かけ比重」です。見掛け比重とは、一定の体積あたりの質量を算出したもので、すなわち重さを表していると言えます。一般的には重いほうが強度が高いと言われており、選ぶ際には一つの基準となります。
以上のような基礎知識を知ると、次は様々な色や結晶の具合などが選ぶ際のポイントとなります。これらは基本的に好みで決めるものではありますが、一つ踏まえておくべきなのは色の変化についてです。石の色は経年でも変化しますし、また水をかけて濡れても変化します。こうした点に関しては展示品やサンプルに実際に水をかけてみたりしながら確認することができます。
墓石の値段
いざ墓石を買うとなった際、最後に大きな問題になるのが値段です。墓石は全国平均で130万円を超えます。墓地は平均で80万円程になっていますので、合わせて200万円以上かかってしまいます。
もちろんこの値段は、地域によって大きく変動します。特に東京など土地価格が高い地域では、墓地だけで数百万を越えるところもあります。また、どのような墓地に建てるかによって加工や仕様が変わりますので、予算をみながら様々な組み合わせを考える必要があります。
これに加えかかってくるのが、工事費用です。地盤が弱いところですと一度杭を打つなどの手間がかかり、より値段が上がることもあります。また、墓地の場所も重要です。重機などが入れないような山奥の土地ですと、より手間賃がかかるということもあります。
基本的に墓石の値段は固定ですが、その他の要因が大きいため、慎重に考える必要があります。墓石を選ぶ際には、余裕を持って、いろいろと検討しながら決めるのが大切です。